７月２６日（水）

バンコクからペチャブリーへ

8時にロビーフロアに有るコーヒーショップへ行き、朝食をとる。今回泊まったホテルは朝食付きだったのでついつい街で食べず仕舞いになる。
スカイトレインに乗り「サーヤム駅」で乗り換え「サパーンタクシーン駅」へ。この駅はチャオプラヤ川のほとりにあり、川を行く「チャオプラヤエキスプレスボート」に乗るには便利な駅だ・・・が、我々の目的の「ウォンエンヤイ駅」に行く道路は川を渡る高架橋となりスカイトレインと平行している・・・タクシーに乗れないじゃん。１駅戻り改めてタクシーに乗り換える。

「ウォンエンヤイ駅」、ここはバンコクの中心街からすると川の向こう側、東京で云えば隅田川の向こうの錦糸町と行った風情か。
５年ぶりに訪れた「ウォンエンヤイ駅」は以前と変わらず雑然としてホームには屋台やら出店が軒を並べている。逆に前回見かけたコンビニエンスストアが無くなっていた。
「コンビニって増えること有っても減らないと思っていた」
「この雰囲気に合わなくて撤退したかなぁ」
等と話しているとディーゼル列車が入線し、客がどっと降りる。鉄道がそれほど発展していないタイの中で約１時間間隔で走るこの路線はローカル線ながら賑わっているようだ。

バンコクの下町「ウォンエンヤイ駅」
10:30発の列車に乗り込み、終点の「マハーチャイ駅」迄約１時間の旅。
「ウォンエンヤイ駅」を出て暫くは商店や住宅が車窓を賑わせるがその先は塩田や養殖池ばかりで途中駅の駅前も家が数件有るだけと云ったのんびりとした状態に。そして途中で警官がいきなり職務質問をしてくる。「？」と思っていると最後部の席に女の子を２人連れていった。
「パスポート持ってなかったらしい」
目の前の席のオバサンが単語を並べるだけの会話で教えてくれた。不法入国なのか、ただ単に忘れた旅行者なのか、それは不明だが連行された15〜6歳の子の１人が着ていたＴシャツは何故か日本語で「私の夫」と書かれていた。そう云えばバンコク市内でも謎の日本語Ｔシャツを着ている人をよく見たなぁと思いながら次の駅で警官と女の子達は降りていった。

また退屈な車内と車窓が続いたがそれでも終点の「マハーチャイ」は駅前に大きな市場が有り、駅の構内や線路際まで商店がはみ出しているような川沿いの漁港の街だった。そして駅から進行方向に尚数分歩くと広い道にぶつかり左側に大きな河が流れて対岸への渡し船乗り場が有る。この乗り場の２階がレストランだ。

時計塔のある船着き場
船着き場２Ｆのレストラン
ゆったりと流れる河の景色と心地よい風、そして旨い料理。そう５年前にもここまで来て渡し船を眺めながら食事をし「あぁ、あっち側に行ってみたいなぁ」とＡ氏と話したが帰国当日だった為に諦めた所以が有る。つまり今回の旅行はそのリベンジです。
「やっと５年ぶりに来ましたねぇ」
「変わってないじゃん」
といいながら、時計塔の有る船着き場の２階に行き、ビールで乾杯。蟹のカレー炒め「ムーパッポッンカレー」、海老チャーハン、青菜炒め・・・。心地よい風に吹かれながら旨い料理を食べ、氷入りのビールを煽る。
「あぁ、もう一度ここに来られて良かったなぁ」
バンコク市内から急いでも半日は潰れ、のんびりしたら一日は潰れる様な場所、「もっと近くにもっと良い店は沢山あるよ」と云う人もいると思う、でも我々はここが気に入っちゃった訳だ。
事実、５年前には記憶がないが直ぐ隣に似たようなレストランがあり、客の入りもそちらの方が良いようなんだから。

これが旨い！カニのカレー炒め
テラス席からの景色
のんびり昼食をとっていると13時になる。次に乗る「メークロン線」は１日４往復しかない超ローカル線だ、それも13:30発らしい。
先ほどの船着き場の隣、もう１件のレストランの向こう側に列車接続用の渡し船乗り場がある。客は殆どいないが船内に「13:15」の時刻が書いてあるから間違いなく連絡船だ。
客も殆ど乗らず、頻繁に出ている渡し船の行き先とは別な、多分歩けば20分程度上流の対岸に連絡船は到着する。
「こっち側のバーレン駅は何処だろう？」と探せば船着き場の桟橋は駅からそのまま延びていた。ホームには既にバーレン駅発メークロン駅行きのディーゼル車輌が入線している。
客も殆ど乗ってない超ローカル線は定刻に出発し、それまでのマハーチャイ線の車窓があれでも実は変化に富んだものだったと思わせるほどのより単調な車窓を約１時間眺めることになる。車窓は家など殆ど見えずマングローブの林の中をひたすらまっすぐ走っていて緑一色の世界だった。そして駅だって何もない場所で停まり近くに家などは見かけない、そんな場所ばかりだった。

何故こんな場所に駅が・・・
メークローン駅
そんな沿線でも終点の「メークロン駅」付近は「マハーチャイ駅」に負けないほど混沌としていた。線路脇に屋台が出ている景色にはもう驚かなくなったが、ここは完全に線路が市場になっている。だから列車が来ると線路上に出した商品を片づけ、テントを畳み、列車が通れるギリギリのスペースを空けて、通過すると戻しちゃう。その景色は誰が見ても現役の線路上とは思えない。
列車は片づけ途中のテントが有ると停まって待ちを繰り返し徐行しながら「メークロン駅」に到着した。延びた線路の先を１分ほど歩くとマハーチャイで渡った河と同じくらいの河に突き当たり、その線路の上には雑貨店が店を開いていた。

マハーチャイからの鉄道連絡専用渡し舟
メークロン線の線路上（１）

メークロン線の線路上（２）
メークロン線の線路上（３）
・・・本当に現役の線路上です、信じて下さい（笑）

メークロンの街は思ったより大きく案内板など無いのでどっちへ行こうか迷いながら歩いた。今日はこれから「ペップリー（正式には「ペチャブリー」と云うらしいが現地では「ペップリー」と呼ぶ）」へ行く予定なのだが、Ｗｅｂサイトを調べても、タイ政府観光局に聞いても情報がない。ただバンコクからマレー半島を縦断する南幹線の鉄道とこの駅は30km前後離れているだけで高速道路かそれに類する道路が有るらしいと云うことは掴んでいた。
「行けばどうにかなるかなぁ？」
「駄目なら別に無理しないでメークロンで一泊し、バンコクへ戻りますか？」
そんないい加減な旅程で街を20分程歩くと駅の南側に当たる場所、駅からまっすぐ歩けば５分程の場所にバスターミナルを発見する。チケット売場のオジサンに
「We want go to Petchburi」
等と云うとメモ帳に「16:00　No.463」と書いてくれる。
「今が15:30だから30分ここで待てばいいわけだな」
とＡ氏と安心して15:55に改めてチケット売り場へ行くと「16:00」を「16:30」に書き直している。
「？」
「If bus no good,we go to taxi」
と再度デタラメな英語で質問するとメモ帳に簡単な地図を書き沢山停まっているバスの１台を指し「トランスポート」「バンケン」と。

よく意味が判らないが、総合するとこのバスでバンケンという場所へ行き、そこでペップリー行きのバスに乗り換えるらしい。当初は同じメークロン市内に「バンケン」と云う別なバスターミナルが有り、そこへ行けと云われていると思っていたが、乗ったバスは直ぐに市街地を外れインターから高速道路に似た道へ・・・
「そう云えばこのバス何処行き？」
「知らないよな、急に連れて行かれ『乗れ』だったから」
最初暫くは学校帰りの学生を乗せたバスは時々路肩に停まり降ろして行くがその後はひたすら高速道路に似た道を走る。料金所らしきものが無いけど、信号も無い、交差する道も殆ど無いし、家も無い。バスは西に向かい、ラチャブリーのジャンクションを南へ。
「あともう少しでペップリーだけど、どうなっているんだ？」
「取り敢えず我々はペップリ−に行きたいと意志表示をあれだけしたんだし・・・」
そんなことを話していると車掌が急に我々を呼びドアを指す・・・そしてバスが停まる。そこは大きな駐車場のような広場とガソリンスタンド。
「・・・降りろって事なんだろうなぁ」
荷物を持ちバスを降りると車掌は広場の先の建物を指差す。バスを降り、そこまで行くと建物は簡易食堂の様で一番右にチケット売場のようなカウンターが。

何とかの一つ覚えで「We want go to Petchburi」とそこにいた兄ちゃんに云うと「ここで待て」と。そうか、ここが「バンケン」かぁ。今更ながら気づき、煙草を一服しているとボディーに「997」と書かれたバスが。メークロンで略図を書いて貰ったときにオジサンが書いてくれた数字と一緒だ。兄ちゃんにバスを指して「ペップリー？」と聞き、頷いたので荷物を持ちそのバスへ。乗るときに再度車掌に「ペップリー？」と聞き、ＯＫが出たので一安心。

そのバスはそれから30分程走り、インターから街に出て停まったので取り敢えず降りることにする。どうやらここがペッブリーらしい・・・でも街の何処なのかさっぱり判らない。

町中で果物を売るオバサン
食堂のテーブルには調味料入れが。左上から時計回りに「砂糖」「ピーナッツ」「ナムプラー」「唐辛子」
バスを降り、取り敢えず街の中心地に向かうことにする。ガイドブックに丁度中心街のホテル名が載っていたので軽トラを改造したトゥクトゥクに乗る・・・・着いたホテルはエアコンも無くまるで牢屋。これは駄目だとガイドブックを頼りにもう１件、実は最初に降りたバス停の直ぐそばのカオワンホテルにチェックインする。冷房・扇風機付きダブルベットサイズで１部屋330B、街の中心から離れているがセブンイレブンが直ぐ隣にある。
シャワーを浴びひと休みして町外れにあるという「ペップリー駅」まで行き明日の時刻を確認する。事前にＷｅｂで時刻表を調べたが最新の保証もない、その上バンコク方面は早朝深夜に集中しているらしく夕方バンコクへ着く列車は１〜２本しかない。
13:07発の鈍行列車が16:55にバンコク市内のの西側、チャオプラヤ川脇の「トンブリ駅」に着くらしい。それに乗ることに決め、再び街の中へ戻るともう日が暮れて一般商店はシャッターを閉める時間だった。
夕飯を食べる店を探すがそこまでガイドブックには載っていない、街の中心街と思われる通りを歩き１件の食堂に入る。メニューもさっぱり判らないし、あんかけ焼きそばのようなものを注文し、ビールを飲む。ちょっと物足りないけど精神的に力尽きていたのでホテルに戻ることにする。トゥクトゥクがなかなか捕まらないので歩いていると食堂街が。
「しまった、ここで喰えば良かった」
「じゃぁ俺はこれ喰ってみる」
もう少しだけつまみ食いはしたが昼間のメークロンから体力的にも精神的にも疲れてしまったためそのままホテルへ帰り、早い時間に寝る。

ＢＡＣＫ − ＮＥＸＴ